蕊/あらい
 
を挙げます。例えば幽人はだいぶ増えていくものだから、この穴はもっと深く埋まっていくのでしょう」だとして。

 こことは反対の山に描いた花が咲くのか? 

よぎるけれども、わかりはしなかった。が、これ以上の道を私は知ることができなかった。支度を終えて、煙突を出る。かえりみちでも一歩、また一歩踏みしめると、土壌は柔らかく踏みにじむ雑葬歌たちが脳裏に沈んでいく。

夏の終わりの驟雨でしかない、歪んだ顔を映し出す水たまりはざわめき、油脂が虹色に耀くばかりの気持ち悪さを、このからだにまとわりつく視線として心の中に侍らせたまま、どこまでも広がる狭い道を、後ろを振り返ることもなくあるき続けるしかないのだとまた悟った。

どうせ過去に戻ることもないサンドピクチャーに、閉じ込められた一枚の花びらは、嘘を尽き続けておおくは夜霧のごとく馨るばかり。いまもまだ近くにいるようで仕方ないかと、咲いだす。


2024年3月12日
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