白菊/リリー
 
 小さく硬ばった花片を
 朝風に震わせる白菊が霜に打たれて
 紫色にうち伏した
 
 昨夜
 把えられないあなたの
 おぼろな姿が身近く訪れた
 手を差し伸べて
 髪を撫でようとすると
 ふと遠のく
 愛していますと告げようとすると
 その目が固くなり
 唯だまって腕にすがって歩く

 心が穏やかになって
 童女のように虚しくなり切ると
 微笑みは今までの何十倍も優しく
 美しくなって
 そっとより添って来てくれる

 目を瞑って歩いても
 こわいものは何もない
 瞼の裏、夜の間に霜のおりた広野がみえて
 その中におちこんでいく!
 安らぎを打ち消して咽び泣いたのだった

 ゆるやかに陽のさし始めた叢、
 露に濡れる蜘蛛の念珠が白菊の葉陰で
 光っている
 
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