帰るべき家/パンジーの切先(ハツ)
 
 草上に敷いた薄水色の布へ、サンドイッチとサラダを置いたまま、わたしはときどき長い草や砂利に足を取られつつ、川の近くへ降りていった。川と草の境目で、ぐらつく石にのるわたしへ、あなたは、手を振った。振ったように見えた。

 草上の布は、あなたをのせて、風になびくこともない。そこらじゅうで、わたしたちが点々と並べてきたレジャーシートが、空に舞っている。

 クリーム色のレジャーシートが空に舞い上がったとき、少しだけ泣きそうになったと、川の近くから戻ってきたわたしに、あなたは言った。

 舞い上がる(ビニール)、(ポリプロピレン)たちは、何かを訴えるように大きな音を立てて空へあがっていく。
[次のページ]
戻る   Point(7)