家路/エバー/そらの珊瑚
うつろいを風で知る
突然キンモクセイの香りが通り過ぎて
ふるさとのまちなみをおもいだす
大切な人を喪って
もう何十年と経っているのに
まだちゃんと立ち直れないの と
彼女は言った
あの日もまた同じ香りがよぎっていった
海まで徒歩十五分
波を待つサーファーの黒い群れ
プールの青い底
ボウリング場
小さなショッピングモール
神社で拾った子猫
錆びた鎖のブランコの音
家路のメロディーを流す公園のスピーカー
交換日記
いとなみ
さよなら
みんなモノクロ写真の中にいて
やさしくて
かなしい
忘れられなくて
それでいいじゃない
戻る 編 削 Point(9)