数式の庭。─前篇─/田中宏輔
数式の庭を眺めて、わたしを思い出すことにしている。
数式の庭もまた、ときどき自分自身を忘れるので
わたしを眺めて、数式の庭を思い出すことにしている。
*
葬られた数式が
しだいに分解していく。
分解された数式は
おびただしい数の数や
記号といったものの亡骸は
わたしそっくりの
亡霊となって
わたしのいない
数式の庭を眺めている。
*
数式の庭のなかにいながら
数式の庭のなかにいるわたしを見ることはできない。
はたして、そうだろうか。
いまはさまざまなツールがあるから
古典的な哲学が通じなくなりつつある
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