数式の庭。─前篇─/田中宏輔
と思った。
*
黒い小さな影が
いくつか、ちらほらと
花にとまっては
数や記号のあいだに
細長い黒い線をのばす。
数式の花たちのうえを
ちらほらと飛んでは
花弁にとまって
数や記号のあいだに
細長い黒い線をのばす。
やがて
いくつかの
その黒い影は
輪郭を明瞭にし
あざやかな色をもって
蝶の姿形となっていった。
蝶たちもまた
数や記号でできた
この数式の庭の花なのであった。
*
花があるので
花のしたの草や土が見える。
庭があるので
庭のうえの雲や空が見える。
雨が降ると
雨に
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