イエローウォーター/おまる
17歳の夏に家出をして初めて東京に来た
降り立った駅は中野で宿の当ても無かった
夕方になる頃には夜の街の匂いが鼻を掠め
アーケードは人の頭が忙しなく動き始める
通りの裏手に蜘蛛の巣みたいな路地があり
眠たそうなあるいは憂鬱な顔をした人達が
裏口の非常階段から建物の中へ入って行く
彼らは水商売をナリワイにしている連中で
ごった返している客層は中央線沿いの人々
0時までのしばしの逸楽といったところか
憂さ晴らしに余念がない感じで歩いている
17歳の眼にはイメージの光暈が起こって
今まで生きてきた中で一番いい景色だった
あそこが僕の本当の故郷のような気がする
線路沿いアパート
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