弁償?/森 真察人
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あなたを全く喪(うしな)ったと思われた翌朝に、僕が真先(まっさき)に想起したのは、かの少女の黒髪とやさしい理知でありました。かの少女の全(まった)き喪失にも係(かか)わらず、僕はいやしくも街行(まちゆ)く少女たちに彼女のまぼろしを見ては、鳩尾(みぞおち)を凍らせずにはおれません。
そうです。うちの猫も変(かわ)り果てました。あの若々しい跳躍も、聞き分けのよい鳴き声も今は無いのです。しかし僕は彼を彼女と同じように愛していると、神に懸けて、確信できるのです。
ああ すべて変ります。喪われます。やがて、忘れられます。
だのに僕はどうして、本当
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