今日の証拠/ホロウ・シカエルボク
秋が重い腰を上げて、ようやく日も少しずつ短くなり始めた、空には一文字に切り裂かれたような雲が浮かび、そいつらを見下ろすように鱗雲が多足生物の足跡のようにぽつぽつと揺れていた、秋に生まれたせいかこういう景色の中に居ると俺は妙に安らかな気分になった、それで、帰りそびれて公園のベンチに長いこと腰を下ろしていたんだ、何処にも行けなくなったころ、よく昼間っからこんな風に景色を眺めていたことをふと思い出してね、なんとも言えない気分になった、特別今もマシになったわけじゃないからね、少し落ち着いているというだけのことさ、俺の人生は忌々しいループの中に投げ込まれているんじゃないかと思うことがよくある、特別大事でもな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)