STAND ALONE/秋也
 
ある朝

昔いたノラネコを思い出す

もういないはず
頭の中にはいるのだけれど

幼い頃の記憶はぐにゃぐにゃ「ト」むにゅむにゅ
とても優しいものではあり
「僕がワタシであった」証明

猫だって人だって
いつかいなくなるために生きている
しかし それとも だから それとも きっときっと

愛された声優が亡くなった
愛した歌手が亡くなった
飼いネコが亡くなったのは去年の夏

僕ら家族はまだ存在しているけれど
誰もがずっと存在する人形にはなれないのだから

畏敬と追悼を記憶に
胸と脳にゆるく熔けさせ
あの日通り過ぎたノラネコのように気高く
いつか来るであろう去る日に向けて
「私がボクであった」栄光の証明になるよう


庭でノラネコに出会う前
死が怖くなって泣き出した僕に
母は抱き締めてくれて
あの夜「みんな順番なんだよ」って笑いながら教えてくれた

あの夜もある朝もずっとずっと越えてきた

珈琲の匂いがする いつもの あの朝を みんなで 迎えるために

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