二〇二四年九月二十八日/山人
 
幼生がのそりと動き私をびくっとさせる。
 石ガラの山道を一〇分ほど登ると送電線巡視路の分岐となり、そこから県境までほぼ高低差の無い山道が用意されている。その楽な山道を一〇分ほど歩くと今度は巨大なアンテナの立つ電波塔の広場まで急登が続く。
 体が熱くなってくると、最近チャドクガにやられた皮膚が、掻きむしりたくなるほどの痒みにおそわれる。痒みは痒みを呼び、あちらこちらで痒みの連鎖が湧きだし、歩きながら片手でシャツの上から?く。痒い所を掻く喜びは、苦痛ではなく、むしろ病的な快楽ではないだろうかとすら思う。下手をすると射精のようなものなのかもしれない。
 六十里登山口から小一時間で電波塔に着き、最初
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