メモ/はるな
かんたんなことに躓いたときにもうだめだって思う。難しい計算が解けなくてもぜんぜん平気だけど、卵をうまく割れなかったらもう死んじゃうって思う。ベランダの植物を枯らしてしまったら生きてる価値がないと思うし。でもむすめには学校へ行きなさいって言うの変だよね、ともかく30分でも行って、それで帰りたかったら帰ってきなさいねって。じゃあ行かなくてもいいじゃん、って言うのももっともなんだけど、そこは形式ってものがあるから。ちょっとは型にはまったほうが楽なんだよ、でもママは?ママはね、ほんとうに型にはまっちゃってどうしようもないんだよ。
あー、ママ、せまいんでしょ。そうなんだよ、でもちょっとこれを望んでた。
本棚のすき間に挟まって本を読んでたとき幸福だった。(絶望もしてたけど)おそとで遊ばないの?って何度も何度も聞いてくれる先生、うさぎだかくまだかのでっかいアップリケを付けたエプロンをしてた。
幸福だった、園庭で園児たちが遊ぶ声が聞こえてて、教室には自分と先生だけが残っていて、本棚の、ちょうどひとりぶんのすき間に体をおしこめて、好きな本を読むとき。
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