ゆうやけこやけ/本田憲嵩
ゆうやけこやけ。また明日。寂しい風が吹いて、また明日。
母さん。どうしてあのときブランコなんかに乗っていた?人目もまったく気にせずに。ブランコゆっくり漕ぎながら。まるで子供のような眼差しで――。あのときこの世界がどんな風に見えていた?
ゆうやけこやけ。また明日。寂しい風が吹いて、また明日。
そんな半ば取り留めのない問いかけに、公園の夕陽はただただ赤く応えるばかり、ほんのひととき世界をまばゆく照らしたのち、あっという間に暗くなって、いつも地平線に沈んでゆくばかり――。
ゆうやけこやけ。また明日。寂しい風が吹いて、また明日。
赤トンボも飛び去って・・・。
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