【批評ギルド】『ブブンヤキソバ』 たもつ/Monk
 
いってしまう。目指したい方向とは別の方向への力
が否応なく働いてしまう歯がゆさだ。

作中で「僕」は「君」への愛を吐露するがその愛も細分化され、絡まり合って
しまう。百歩譲ってこの愛をブブンヤキソバとして完全な物として置いておき
たい、保存しておきたいと思っても、それすら許されないのだった。完全なブ
ブンヤキソバはゼンブではないにしろ、麺を意識せず、お互いに絡まり合った
りしないのだ。しかし叫んだ瞬間に愛はどんどん分割され、手に負えない代物
になってしまう。時間は止まらない。

僕らはこんな世界で手に負えない代物ができあがってしまうたびに「残念だ、
残念だ」と思い、時には目をつぶり、時には情けなく笑い、寝て起きるとまた
同じことを繰り返すのだった。週に1度くらいは天上を見上げ、その先の空を
見上げ、「いつかきっと」などと思い背筋を伸ばし、同時に冷蔵庫の中ではそ
ろそろ残り物のジャガイモが腐り始め、月曜日の朝にはゴミを出す。
時間はやはり止まらない。


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