空の料理人さん/服部 剛
今までの僕は
美味しそうな料理を画用紙に描いては
「夢」という文字を隅に添えて
誰も訪れないギャラリーの壁に飾り
寂しい腹時計を鳴らす空っぽの胃袋を
満たしたつもりになっていた
見上げた空にうっすらと微笑み
雲の帽子をかぶった
天国の料理人(コック)さん
時に僕の細い足を震わせるような
気まぐれな雨をしきりに降りかけて
ずぶ濡れになった僕をつまみあげては
キッチンのまな板の上に乗せ
一体どんなメニューに仕上げて
器に盛ってくれるつもりかな・・・?
あるレストランで
やがて誰かの舌にとろける僕を
誕生日のお客さんの頬をほころばせる
「世界にひとつの味」にしてくださいな
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