ノイエ・タンツ/医ヰ嶋蠱毒
想望されていた標は
産聲と共に遺失してしまった
一本の枯枝
鮮明な暮相のなかで
それは赫い雫を滴らせながら
壕を指し示す
雪片と足跡を北風が浚うころ
刑吏の貌は逆光に黒く
まるで給餌を待つ猿のようだ
先ずは背後から撃たれ
断頭はそれから
ツェランの精緻な憂鬱すらも
いまや手慰みの虚構に過ぎないのだから
大詐欺師どものはらわたで
凍原を飾り付けてやりたかっただけ
俺は窒息する蘭鋳
自慰に耽るマスティマ
ヤー・ノイエ・タンツ
音楽は要らない
耳鳴りばかりが患部を染めてゆく
想望されていた標は
産聲と共に遺失してしまった
ならば偲ぶべき幹もあるまいと
糸鋸の歯を研いでいる
俺は鉄の奔馬
蒸散する硫化水銀
壕の底に堆く積まれた白磁の上
免疫の膜が曳く光芒の糸を
手繰る先に動機は陳列される
背反するその律法こそが
ヤー・ノイエ・タンツ
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