咲花とかえで/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
とぎれとぎれに聞こえ、同じような調子で緑が少しざわめく。そんな様子を感じ、タオル地のハンカチで顔や首の汗を気持ちはたくと、つかのま安らぐ感じがした。そして以前から気に掛かっていたことを思い出す。
 しかしそれに気に取られている時間が、かえでにはあまりなかった。一息つくと。かえでは練習場へ足を向けた。

 着くと、後輩の田中咲花がはちきれんばかりの笑顔で駆け寄ってきた。すでにユニフォームに着替えている。
「せーんぱぁい、やっと来ましたね!」
 咲花は中学一年生。かえでとは近所で、練習後はいつも一緒に帰っている。
 母親の智恵がかつて少年団に所属していたことがあり、物心がついた頃にはバット
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