それさへあれば/
積 緋露雪00
る。
それは寂寞とこのがらんどうの胸奥が共鳴を始め、
「ひぃひぃ」とおれはやがて呻き声を発する。
そのときおれは、まだ声が出せるのかと感動し、
息するおれは
生きてゐることを実感するのであるが、
然し乍ら、そこでも断念が邪魔をする。
感動する感情は断ち切られ、
何事にも断念が先立つおれの生き方を
おれが強要するのだ。
今のおれはどん詰まりなのかもしれぬが、
まだしも探すものがあるだけましかと
それが何かと思ひながら煙草を吹かす。
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