ふりかえる生長/soft_machine
 
生まれた時からバッハもピカソもあった訳です
赤ん坊の私がそれらに気づくまでの長い距離は
何かの原型でありそうだなと推察し終え
当時の感覚まで思い出されていたのです
座卓には抽斗がついており
女児が生まれる度に研いた枝を漆で覆った箸を並べ
頭の隅にはぼんぽん縦横に鳴る柱時計
塁上の影と雲をつき破る
スコップの歯につく鮮やかな血痕

どこかで肉親を知らない郭公が鳴いていたのです
愛情を一身に受けた罪を知らなくても美しい声
本当の嘘とはなにという
赤はいまにも黒となる
親と子との人間的接点で
それ以外の意味などなかった
突きつけられたのは笑っていられない呪いの羅列
あ、
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