旅のこと/はるな
 
で色とりどりのガラス細工をみているときも、サービスエリアでソフトクリームも舐めているときも。
しわのないシーツに喜んだり、広い湯船を楽しんだりしても、そわそわして悲しかった。
そうして家が近づく帰路では、しばらくの留守の間に部屋が様変わりしているんじゃないかしらと想像したりして、このままもう2度と帰りたくないと思ったりした。心の中で。

でも帰ってきた。
長い運転を終えた夫が煙草を吸いながら、台風はたいしたことなかったのかな。と言っている。
結婚するまえにも、夫と旅をした。みじかい、行って帰ってくるだけのような1日だったけどあれは旅だったと思う。猫のいるホテルに泊まった。あのときすでに夫のことを愛していた。もしかしたらいまよりも強く。


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