初秋/山人
ない典型なのだろう。もう十分すぎるほど生きた気がする。なんでも有りの生きざまを、カオスのような人生を時間の藪に塗れながら。
「しようがない。心臓が止まらないんだもん」父は今年末に九十四歳を迎えるが、未だ酒を嗜み酔っぱらうことすらあるが、たまに冗談で口にする台詞だ。父にとっても今は第四くらいの人生なのだろうか。酒を嗜み、時代劇や相撲観戦をし、六十年以上前の事柄を饒舌に独り言を語り続ける父は、ある種怪物なのかもしれない。
そんな父を見ていると、父より二十七年若い自分が生きることに疲れてしまっているのは情けないのかもしれない。
消えてしまいたい、そう思うこともあるが、それよりも自分のあらゆる
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