恋/完備 ver.2
 
引っ越して最初の夏、
メロンソーダを飲み干して
あなたは私を見つめた
当たり前みたいに見つめた

引っ越して十年のいま、
過去百年で一番暑い夏が来て
響くような夕立ちと雷が
当たり前になってしまった

あなたを中心に回転するおびただしい銀河には
それぞれ固有の軌道があるから、
眺めたり、遮ったり、なぞったりして、拝啓

   二〇二四年の馬鹿みたいに暑い八月でさえ
   日が昇るまえの、町のすべてがうっすら青
   い時間には、エアコンなしでも過ごせます

                    敬具

当たり前に生きれば
当たり前にかすんでしまう記憶を
まぼろしで象る

詩を書くためにした恋じゃないのに。
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