或る夏の理由 「風の通り道」/藤丘 香子
硝子細工の
幾つかの重なりは
小さな風の溜まり場をくるくるとかき混ぜて扉を揺らし
丘に続く小道を夢見るのです
夏が降り
気まぐれな模様を織りなして
あのひとの指に留まった雨粒が私の
上方で霧を作り
竹竿の
細かい網で掬った水滴がさらに
水を呼び
七月の蛍の水辺の柔らかさで瞬いて
追っていくうちに音を忘れて映しました
私の眼がたくさんのものを見過ぎないように
あのひとの瞳の中に永遠に沈んでいたいと
本当に心から望んでみたのです
途切れない空へ
白く流れる雲のようなあのひとの気侭さについても
私はまた深く愛しているのだと
とても不自由な場所から気づかなけれ
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