海の中の風景/soft_machine
 
ながい休みを終えて 心にのこる青
とても気持ちよく泳げた日
眠りにゆく藻や蟹の子どもたちに からだを洗わせ
子どもみたいに 沖でじゃれあって

冷たい層をくぐり抜けられたら
そこにも きみがいたのではないかと思ったけれど
きみは やっぱりひとりしかいなくて
その背中の空がたまらなく恋しい

沈んでゆくと どこかで
やぶれた耳から うち寄せる波は
袋に溢ち
ひらいた点から
すー、と細い糸をよる
大切な記憶だけが溶け
いつの間にか雲にされ 飛び去る
あとには味も 匂いも 輪郭もない
水の町かど
さらさらにこぼれた貝殻
鯨の愛のこだま

月にあやつられると
砂浜にいた さっきまでの自分が
まるでまぼろし 渦に誘われる
細胞のあとに残された渚で
これでやっと世界とひと粒になれたよ、と服を脱いで
きみは泡につつまれでマッチを擦って
鰓があった頃の愛について話しはじめる




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