単なる夕刻/
A道化
たったひとつの日没で
子供の左の手の中の
逆さの野の草の束からすんなりと
午後の初夏は落ちてしまい
子供の左の手は
無数の落胆のうちのひとつとして
野の草の束を、用水路へ
暮れかけた、用水路へ
投げ捨てられたムギ科植物の、葉脈の
些細だった陰影は
ムギ科植物の姿を覆い尽した後
その姿を溢れ、拡がり、用水路が
暮れ終わる、ああ
用水路が、今、暮れ終わる
2005.5.21.
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