きらめくものたち/由比良 倖
まった。頭の中のお喋りをやめる。
書くことは呼吸に似ていて、キーを押したり、文字を消したりしながら、私はこの場所と、
遠い街や海の柔らかな記憶を行き来している。それは、記憶ではないのかもしれない。私
は遍在している、私は拡散している、とときどき唱えている。
つまりはね、……と私はいつも結論を急ぐ。結論なんて宇宙の終わりまで無いかもしれな
いのに、そして宇宙に終わりは無いかもしれないのに。
「私は私として生まれて、私として死ぬ」という、本気で吐く嘘、それは嘘だけど、かた
くなな信念として、私の命の芯を形成している。けれど、私は本当はこう思っている。
(私は生き残ってしまっ
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