ある日の叔母のこと/朧月夜
 


 母の一周忌のさいの会食にも、わたしは参加できなかったので、叔母の詳しい近況などを聞くことはできませんでしたが、叔母は叔母なりに、母と親しくはしていても、叔母なりの対抗心のようなものを持っていたのかもしれません。このごろの気候のせいで、たぶん足腰がだいぶ悪くなっているのだろうと、お金を借りに来たのはそのことが理由、とわたしは想像するしかありません。

 叔母はあっというまに帰っていったのですが、その短いあいだに、庭の蕪と胡瓜を取って、浅漬けを作っていきました。父方のレシピとは違って、薄味で、ほんのりとかすかに塩味(えんみ)が舌に残るのが、わたしにとっては心地よい。叔母の差し入れは
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