タイトルを持たない、/パンジーの切先(ハツ)
 
にフォークを刺そうとしたのと同じ時だった。白いワンピースから出た手が、健康的に焼けていて、その、日焼けした肌と白い布の作るうつくしいコントラストに目が吸い込まれていく。そのひとはさっさといってしまう。おそらくお手洗いに行ったのだろう。それよりも、私は、白いワンピースに包まれていた、いつかのおかあさん、を思い出していた。
 おかあさんは、私と同じで、(私が母と同じで)やけにしろくて、だからさっき見たようなグラデーションはできない。ただ、白い布に包まれた白い身体があるだけだ。わたしの左の上腕には、いくつか離れて火花が散っているような黒子があった。今もあるそれらを、当時は、何かあるといつも、指先でつな
[次のページ]
戻る   Point(2)