タイトルを持たない、/パンジーの切先(ハツ)
に少しもたれながら、ホールの入り口の方を向いて座っているのが、母だと気づくのに、少しかかったが、出された水をちびちびと飲んでいる姿を見て、ああ母だ、と思う。店員は、私を席に案内したついでに、私の分のグラスに水を注ぎ、母のグラスにも水を足した。店員が、メニュー表をもってきて、今日のおすすめがほうれん草となすのトマトソースだと伝えて去るまで、私たちは目も合わさなかった。
あ、久しぶり、と私が声を掛けると、母は、久しぶり、と返し、一つしか置かれなかったメニュー表を手に取って、目を通し始める。あー、その、元気?と、次切るのは、天気のことしか残らないペースで、私は母との会話カードを切ってしまう。元気も元
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