タイトルを持たない、/パンジーの切先(ハツ)
ンカン音を立てるので、それに気を取られて、うっかりと蹴飛ばしてしまった銀色の、やけに軽くて私の拳くらいのサイズしかない小さなバケツを元にあったであろう位置へ戻す。
この暑さのなか、駅から25分も歩いたために、私は汗をだらだら流していて、小さなバケツなんかどうだってよかったのだが、そのままではなんとなく後味がわるい気がした。よっ、と声をかけて、膝を折った姿勢から、もとの姿勢へもどり、扉をこちら側へ引いて、中へ入ると同時に、キンとした冷房の涼しさと、いらっしゃいませ!という複数の女性の声に迎えられた。
ご予約は、と一番近くの店員に尋ねられ、ああ、予約していて、連れが先に入っているんです、若林と
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