平和公園/本田憲嵩
 
ついに、
投下されてしまった、
夏、
という爆弾の、
じりじりとアスファルトが焦げ付いてゆくような、
そして、
その熱波をさらに助長してゆくかのような、
せわしない、
蝉たちのなきごえ、
陽炎ごしにじっと樹木たちが、
その身を歪ませながら、密かに汗をかいている、
そんな忍耐の季節、
慰霊碑に花と線香をたむけて、
樹木のように、
じっと動かずに、
いのり、
を捧げる人たち、
の背後に燃えたつような、
ひとびと、
と、
激しく真っ赤な炎、
その年々うすれてゆく記憶、
それでも、
サイレンの音は精いっぱい劈くように、
世に鳴りひびき、
一匹のウミドリが一つの決意を固めたかのように、
大海原へと、
飛びたってゆく、


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