白水/英田
のしない体が私を飲みこむ。私は一匹のサカナになり、匂いのしない海を泳いでいるような感覚を覚える。女も同じように金の匂いしかしないため、女から匂いを感じ得ない。私は彼女の上を泳ぐが、沢山の札束の中を泳ぐような感覚になる。海の表面が大きく揺れる。岸辺がないために私は泳ぎ続ける。まどろんで眠り、沈むまで。
「ねえ」
「なんだい」
「姪っ子が近いうちに、上京して来るんだけど、あんたの所に住ませてやってくれない? まあ、ずっとじゃないのよ、少しだけでいいからお願い。なにをしてもかまわないから」
女は私の前におもちゃを差しだした。女を殺して女の姪っ子を俺だけのおもちゃにしよう、そう思った。
女の
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