白水/田井英祐
 
れた彼らは、私に対してしばらくは何も言わなかったものの、二月経った頃から金を返してくれと催促するようになり、私は返そうと思えば返せたものの滅茶苦茶な生活を突き進むために金を返さなかった。
 滅茶苦茶な生活をすればするほど周囲から私をまともな生活者として成り立たせていた友人や同僚は消えて行ったが、その代りに出来た周囲の空白に夜の闇が立ちこめた。私はその闇を明るくするために紙幣を燃やし、紙幣を燃やせば燃やすほど周りは明るくなり、その明りを求めて沢山の蛾が毒々しげに輝く鱗粉を撒き散らし周りを取り囲んだ。炎は何時しか燃え尽きるものだから蛾達は炎から炎へと渡り歩いている。蛾達は目印のない闇が恐い。しかし、
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