幸福論/田井英祐
正しいことを疑わない。
「ユウニイきちゃない」
「おみつちゃんは、ご飯は楽しく食べるものといいます」
「ユウニイはお犬さんみたいに食べてたのしいの」
「お隣のコロは楽しそうに食べます」
「イヤ」
マチコが両手で顔を塞いでしまうとユウはわたしをうかがうようにしてみる。
「みつ姉ちゃん、マチコが泣くとご飯食べても楽しくないな」
私もマチコのマネをしてお箸を置いて両手で顔を塞ぐ。私はユウがどうふるまうかを中指と薬指のあいだからうかがう。ユウは指の隙間にある私の目をじっと見つめて、
「おみつちゃん、ズルい」
シンとした食卓にユウの声だけが響く。ユウが「もう」とか「ああ」とかプチプ
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