幸福論/田井英祐
から、トントントンとまな板を叩いてシャクシャクとしゃもじを滑らせひな祭りのお夕飯の準備。夕闇が部屋のなかに落ちて弟と妹の足音が家の二階からすべりおりてくるころ私は料理の味見を終え頬緩ませる。お吸い物の味もよし、酢の物もぴったり、散らし寿司は艶やめいて食卓にあでやかに映え、ひな祭りが色どわれる頃、弟と妹の顔もほころんで、笑顔が咲く家庭、日本で一番よい家族の夕食が始まります。
双子お揃いの「おいしい」のデュオと二人の笑顔に頬が緩む。弟のユウがお茶碗を箸で鳴らしながら散らし寿司をかき込むと妹のマチコがユウの頭をはたく。はたかれたユウが見つめかえすとマチコは目を涙いっぱいにする。でもマチコは自分が正し
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