幸福論/田井英祐
 
チプチため息をつきながら両手で頭を抱え込む。それだけでは私とマチコはピクリともしない。ユウの瞳はまぶたのなかでコロコロ揺れて今にも涙と一緒に零れ落ちそうだ。
「おみつちゃんもマチコも、二人してズルい」
 ユウはひとつしゃっくりをして
「あーん」
と泣いてしまう。
「ヒクッ」
泣きながらしゃっくりがとまらないユウの背にマチコがそっと手を伸ばしてさすってやる。しゃっくりをしながら鼻をすするユウの鼻水を吹きながらわたしはいう。
「ユウ君、みつ姉ちゃんも謝らなくちゃいけないことがありました」
 椅子をひいて立ち上がり台所の方へ回って冷蔵庫を開きお刺身が盛られた大皿をとりだす。大皿を持って食
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