キキコ/田井英祐
煮物つくるやないか。ほんま、偉いチビなのが惜しいなあ」
そして、ここぞとばかりに言われた。
「だって、偉いチビやもん」
腹立つから言うた。
「うるさい」
軒先のライトを背にしたキキコがどんな顔しとるか分らん。でも、なんや、もうこっちは恥ずかしいから、ほんま顔も見たないし見せたない。せやから、背を向けて歩いた。そしたら、後ろから、大きな声で、
「お父ちゃん、ファイト!」
って言われた。「ほんま、チビのくせに、うるさいし人に言わんでもええこと言うし、騒がしい奴。そんなこと誰でもわかっとる。お前のためやったら、官憲も金貸しも極道も、何でも、追い払ったるわ。お前もそんな僕のことわかっと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)