守護天使の休息/中田満帆
けじゃない
渇いた舌をねじり入れられた思想というまちがい
ホテルの裏口へとつづく廊下の途中で撲られた後頭部の詩学
踊れなくなった怪人たちが調理場の革靴を塩素剤で調理しているなか、
おれはおれを諒解できず、ヒロインのゐない人生を賭けて、
ブリッジをくりかえしたんだ
語り手の死をアナウンスする最期の駅のスピーカーが
きみやあなたの心臓を要求する
なにもやるな、なにも応えるなとおれはいう
こんなことが罷るところでいったい、なにをいえばいい
小説はもう読まない
小説という死が伝染する通りで、
2度目の事件、
複製された事件を
追いかけることはできない
花と卍をとりちがえたひとびとのまえで飛行機を撃ち落とす
みながみな、おなじように傘の隠語をくりかえすなかで
おれはいままでにない痛みのなかで
鎮痛剤もなく、患部を抱えながら書いている
守護天使の休息が終わらない場所から、
短波ラジオを受信するんだって。
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