翠雨/リリー
 
 日は長く 妙に生暖かい風が出て
 濡れながら歩く大通りを
 脇道へ逸れると
 連なる飲み屋や風俗店看板

 そこに女が居るのをみた

 薄いスカートは
 夏がとっくに通りすぎた様に
 疲れてみえた
 あらゆる脂肪に包まれた男に
 すがりつきながら
 唇だけがキャラキャラ笑っていた
 
 脂肪の男は
 威張って両の脚をひろげながら
 細い腰を抱いて露路に消えた

 どのくらいか私は
 生暖かい風に吹かれていた
 そして
 薄暗さの充ちて来るまでに
 本降りになる前に、
 気付いたら駅へ向かって駆け出していた
 
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