悪魔/リリー
アテネの丘から
陽の落ちるのを眺めた人
暖かい心がある
鋭い頭脳がある
広い度量がある
だが そのどれよりも弱々しい男の魂が
彼自身を求めている時
かたい指がある
細い指がある
黒い指がある
それらは消えてゆくべきなのだ
彼は かたい鎖に身を縛られたまま
やはり漂い始めていた
名残おしい声をかすかにふるわせ夜が明けかけた
そうだ
まさに夜が明けて来た
廃れ果てた庭の片隅に
花の色は 褪せもせず
日輪と金の歯車が重なって
とめどもなくまわりつづけ
思わず目をつむった彼の胸をギリギリ締めあげる
男は天から顔を背けたまま
からからと鳴る白骨となっていた
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