檸檬/リリー
 

 麦焼酎のロックに檸檬を絞れば
 金粉になって
 グラスの底に沈んでいく
 センチメンタルな別れのことば

 振りはらおうと
 あがいている姿が
 やはり
 黄色くなった泉をのぞいている

 曲がりくねった
 土塀の続く小路
 行き着く先に
 かつての口づけが埋まっている

 埋まったくちづけの呻唸を
 時折 聞きに行くのも雨の夜

 しゃぶって齧ったレモンの皮を
 流し台に捨て、
 唯 無性にねむりだけを恋う



     
     (初出 日本WEB詩人会 2024/06/12)

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