閃篇5 恐怖の巻1/佐々宝砂
1 歩いていった
ある台風の日、灯台が根本から消失した。台風が原因だと思われた。怪獣映画の冒頭のようだという者もあった。人々はそれなりに天の災いを恐れた。しかし誰も真実を知らぬ。灯台は歩いていったのだ。ひとりで。荒れる海へ。自分の友が呼ぶ海へ。やがて友と戻ってくるだろう。
2 御札
深夜までやる書店で働いた。営業時間が終わるとレジを精算しざっと片付け施錠する。全部閉めて帰ろうとしたらセキュリティーの警告音が鳴る。どこか閉まってないらしい。確認したがみな施錠済み。困ったなと休憩室に行くとテーブルに御札がおちていた。神棚に戻した。警告音は止んだ。
3 突き当りの壁
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