閃篇5 そのさん/佐々宝砂
 
1 岐路

私は毎日岐路に立つ。朝の窓を開け放ったとき、お昼どきのコンビニで小銭を落として放置したとき、アサヒとキリンとサッポロとサントリーとどれにしようか悩んで結局奮発してヱビスにしたとき、私は毎日どころか毎分ごとに岐路に立ち、朝の窓を開けない私、小銭をきちんと拾う私、ヱビスじゃなくてバドワイザーを買う私、無数の私が無数の宇宙で、さらに毎秒ごと岐路に立ち分裂してゆく。


2 駅のホームで

駅のホームでぼくは電車を待っていた。冬の風がぼくたちを揺すりぼくは目にゴミが入ったような気がした。それでぼくは俯いていた顔をあげて目をこすった。そのときぼくの目に忘れられない光景が飛び込んだ。
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