性(さが)/リリー
 

 雨雲の 垂れる夜にした恋だったから
 跳ね上がることもしらなかった
 若い胸
 月日がたって
 ゆれ動いた女の性の激しさは消えた

 雨の跡を縫いながら
 古い み寺を歩くと
 欲望は昇華し
 希望すら蒸発し去った

 益々拡がっていった悲しみに
 耐え慣らされて
 美しい時をカタチヅクル

 陽が落ちて
 月星出ぬ
 そのわずかのすきに妖しくも開こうと
 吐息にゆれて

 月がのぼる と

 妖しい花は髪を洗いながら口ずさむ
 歓びの日の 歓びの歌
 悲しみの日の 悲しみの歌

 素直になる かなしい女の常だろう




       (初出 日本WEB詩人会  2023/05/08)
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