水と/中沢人鳥
水泡ひとつ
コ|ヒ|カップの上にみる
向かい合う顔の間の空間は
隙間なく埋められている
水蒸気が凝結
水滴が付着したグラスには
水が鎮座する
口に運ばれるのはあまりに容易で
喉越しに天災の禍根が滲むことには
気付けない
気が付かない
咒文が封入された水
わたしの呪いか
あなたの呪いか
水に問う
水を飲む
雨が降り
腕に衝突する滴は
弾かれる一方で
雨が止み
水溜りに足を踏み入れるのは
いつも
わたしたち
どうしても涙が溢れるのは
それをとどめていた空気圧が
いつかはじまる会話を予感して
萎縮するからで
つまりは条件反射だからだ
今立っている
どこかに立っている
上から降り
下に溜まり
いつも漂い
流れ
結露する
この場所は水の星
コ|ヒ|は苦かった
確かに、苦かった
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