梅雨と飛来/ゆるこ
 


朧げな 赤い花を摘んだ/剥いた
溢れる果汁が人の皮の下と同じで
ぷっくりとした繊維が 空気を熱く昂らせていた

私の熱を奪い取って からからの空を膨張させていく
地球の血液

一息も吸えない ゆらぎの中へ
それは眩い蜃気楼のような肺を納める



君の血液の中に含まれたい と
湿った皮膚をひたすらくっつけあい
瞳同士までくっつけあって 
次に網膜が欲しいと言うものだから
光の読み方と 脳みその一部を彼の中に解き放った

それはうやむやの宇宙で
呼吸もできず 消えてしまう

そんな日々を 唇を噛み締めながら繰り返している
呪いだよと 熱が囁く
同化なんて 誰もかれも出来ないのだよ



ひたすらに 此れ唯ひたすらに
瞳は透過した命の残り火を追う
それは誰かの軌跡 であり 事故現場の残穢でもある

ただ その極限の中に私はあなたと出逢いたいと
此れ唯ひたすらに/健気に/吐き気をもよおすほどに


初夏の膨張した空気を喰らい また
どろりと溶けた皮膚を花火のように散らして征くのだ



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