仏蝶/リリー
 
 われらはビーチグラス埋まる砂地で咲く
 浜木綿なのか

 空に憧れ
 海に真向い
 樹々にさまよい
 陽を讃え
 愛の溢れた瞳を求め微笑み合う
 ひとり あなた
 ひとり わたし
 互いの胸の動きが何処にあるのか解らない
 御空に白雲 聳り立ち
 物思いは何と小さく哀れなもの

 磯の香りの翳りに突如アゲハが飛来してきた
 
 その蝶は黄袈裟と黄朽葉色の法衣をまとう
 広く大きな袖巾に磯風が潜りこんで
 膨らむ両袖、踊りはためき
 仏蝶と成って
 浜辺に立ち並ぶわれらへ呼びかける

 日本に打ち寄せる四方の波濤の
 遥かな唸りに耳をとめて
 狭い平野、けわしい山岳の底深くに
 脈うつ暗い空を見てみなさい
 雪雲舞い踊り
 眼を覆うとも
 熱い胸を寄せ合う若者の歯ぎしりに
 気付くだろうか

 それは天地の区別もつかない彼方の遠い声
 やはり どこから見ても
 揚羽蝶が飛び去ってゆくだけなのだ
 
 

  
 
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