むすめのこと/はるな
でかくてまばたきをあんまりしない)がやってきて、むすめをなだめたりはげましたりして教室まで連れてってしまう。(時々失敗するけど)。そんなのより、咲いてるばらの数をかぞえたり、伸びてきたノブドウのつるを引っこ抜いたりしたら楽しいと思うんだけど、むすめはそれだって好きじゃないのだ。彼女が好きなのはデジタルの画面の向こうにあるきらきら光るアバター、人工音声の重なった音楽、ここじゃない世界へどんどん飛ばされてくファンタジー。あっという間に背中まで伸びちゃった髪を編み込んであげるとき、ねー今日学校行かなくてもいい?って聞いてくる。最初から失望しながら。
最初から失望してるんだね。かわいい、なんにも知らなかったのに、ちゃんとわかってた。ちゃんとあなたはあなただよってわたしは言う。最初からそうだったよ。
これはつながらない輪なのだ。また風が吹くから。傷ついたりしないと決めてた、少女のころの決意が、むすめのなかに芽生え始めているのを感じる。
[グループ]
戻る 編 削 Point(7)