闇に歩けば/リリー
 

 地下へ降りる階段の
 足音を吸いこむノワールプロフォン
 ぞわぞわ 脈打つ気配に取りまかれる

 手のひらで触れる空洞の壁
 その冷たさしか頼れるものは無く
 心細さに すくむ足でくぐりこむ森

 そこには繁った樹々の密生した山があった
 二度と 陽の光など見られないのではないかと
 誰もが恐れるような高い山の
 ずっと奥で
 一本の大きなけやきの木の根元に
 泉が噴き出していた

 数日前から
 白い、古めかしい影がちろちろ踊っていたけれど
 思ってもいなかった泉が噴き出して
 辺りの苔を浸し
 どこから差すのか一條の光に
 虹となって輝いたのだ

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