星廻り沈没船/あらい
 
がれた外観からはみ出す。これら頑なな痕跡が〈轍が飛行機雲が葬列が、〉名残留める面影が、正午、自我や景色へ鈍色の鍵となる。そこに瑠璃散鳥がいた――ふりむけば獣道とする己の通り過ぎた道が。髄が節が、蘖(ひこばえ)が、くすみがかるニンゲンが――あられもない場を、伏し目がちにおるのだが、今にしてひとりもいないのだから、とほぐされ揮発する。このなにかに縋りつく妄想、逃げ場を求めて。風になびいて消えたりみえたりを繰り返していた。結局。もう廃ロープウェイのゴンドラから飛び去った影。これは山肌を文字で埋め尽くした装飾とそこから降り注ぐ、盛りがついた花々と、おおく、大きなあくび、葉焼けを起こした肌さえも見境な
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